● アウディにとって10回目のルマン24時間レース
● 信頼性と低燃費が重要な要素
● アウディR10 TDIは3度目の参戦
インゴルシュタット発:6月14日~15日、アウディは伝説のルマン24時間レースにおいて、10度目のスタートを切ります。アウディは、この伝統ある耐久レースで8度目の総合優勝を狙っているだけではありません。世界で最も過酷とされるこのレースは、市販モデルへの採用を計画している新しい技術を試す最高のテストベンチでもあるのです。
TDIエンジンを考案したアウディは、アウディR10 TDIから得られたデータを活用し、次世代ディーゼルエンジンの開発に力を入れています。同社はルマンにおいて、スポーティなダイナミクスと高い効率性は相反するものではないことを証明してみせました。TTおよびTTロードスターのTDIモデルの市場導入は、ルマンプログラムから導かれる論理的なステップなのです。また、500馬力を誇るアウディR8 TDIルマンは、TDIパワーを採用する世界初のスーパースポーツカーです。
2005年末に発表され、世界に衝撃を与えたR10 TDIにとっては、今回が3度目の参戦となります。アウディは、ルマン24時間レースを制した初のディーゼルレーシングカーR10 TDIによって、モータースポーツの歴史に新しい一章を書き加えました。そして2007年にも優勝。今年は、アウディスポーツ チーム ヨーストにとって、アウディR8が2000年、2001年、2002年に達成した「ハットトリック(3連勝)」の偉業を繰り返すチャンスなのです。
アウディは、10度目のルマンにおいて、燃料効率と信頼性が優勝へのカギであると考えています。3年目を迎えたアウディR10 TDIは、ラップタイムを見る限り、世界最速のプロトタイプの座を他に譲っています。しかし、ピットストップの時間を最短に抑えなければならないレース全体で見れば、チームヨースト3連勝の可能性はいまだに高いものです。650馬力を超える出力を誇るV12 TDI エンジンの高い燃焼効率と経済性は、よく知られています。信頼性の高いR10 TDIも同様、4月に行われた30時間の耐久テスト時にも何の問題も発生しませんでした。またそのボディは、衝突や事故が発生した場合にも、最短時間で修理ができるように設計されています。
チームとドライバーも、円熟の域に達しています。ラインホルド・ヨースト率いるチームヨーストは、過去9回にわたる優勝歴により、ルマン史上最高のチームと見なされています。ドライバーは去年と同じ布陣で、全員の優勝回数を合計すると23回にも上ります。
アウディの優勝回数は7回ですが、アウディスポーツが開発したTFSIエンジンを搭載したベントレースピード8による2003年の優勝を含めれば、アウディのテクノロジーは2000年以降のルマンにおいて、まさに無敵と言えるでしょう。Dr. ヴォルフガング・ウルリッヒが率いるアウディモータースポーツは、その地位を確保するために、今回もあらゆる努力を惜しみませんでした。
ルマン24時間レース直前コメント
Dr. ヴォルフガング・ウルリッヒ(アウディモータースポーツ最高責任者):「LMS(ヨーロッパ・ルマン・シリーズ)およびALMS(アメリカン・ルマン・シリーズ)の結果を見ると、2008年のルマンはとてもエキサイティングなものになると期待できます。競争は激しく、他社チームもこれに向けて着々と準備を重ねているようです。我々にとっても、大きな挑戦が待ち受けています。目標は優勝ですが、今年のルマンはアウディにとって過去最も厳しい内容になると思います。挑戦とは、目の前の壁が高いほど、気持ちも昂ぶるというものです。」
フランク・ビエラ(アウディ R10 TDI #1):「レースに対しては、ポジティブで楽観的な気持ちで臨んでいます。関係者全員が、高いモチベーションを保っています。きっと、これまでで最も困難なレースになると思います。LMSでは、プジョーが有する可能性がよくわかりました。ルマンでも同じ展開になることでしょう。しかし、アウディには、ピットストップや戦略面での強さがあります。去年も、この分野においては完璧でした。また、アウディR10 TDIには、他が必ずしも備えていないスタミナがあります。興奮に溢れたレースになると思うので、とても楽しみです。」
エマニュエル・ピロ(アウディ R10 TDI #1):「オリンピックにも似て、ルマンはレースシーズンのハイライトといえるイベントです。シーズンを通し、我々はこのレースに照準を絞ってきました。やり直しの効かない一発勝負です。ルマンには、いつも最高の状態で入れるので、私もリラックスしています。これまでの実績もあり、アウディ R10 TDIは去年からさらに進化しているので、私は楽観的な見通しを持っています。ドライバーたちはアウディのために力を合わせ、すべてが良好な結果に向かって進んでいます。しかしルマンは常にタフなレースであり、そこには予期できない側面、多くの謎が潜んでいることも事実です。」
マルコ・ヴェルナー(アウディ R10 TDI #1):「今回は、これまでに例を見ないほど厳しいレースになるでしょう。これまでのLMS結果を見てみると、プジョーが強敵になる可能性があります。しかし、アウディスポーツも努力を重ね、あらゆる対策を施してきました。厳しい展開は予測されていますが、目標は優勝です。本当にそれが実現したならば、新たな歴史を築くことになるでしょう。70年代のバトルがいまだに語り継がれているように、これから20年、25年、もしくは50年後にも、人々はアウディの偉業について語り継ぐかも知れません。」
ディンド(リナルド)・カペロ(アウディ R10 TDI #2):「例年の通り、ルマンこそが我々にとって究極のレース。世界で最も重要なレースの1つです。我々は、それに向けて準備をしてきました。競争が激しくなることは予測済みでしたから、冬の間に質の高い仕事を多くこなしておくことができました。これからも、さらに焦点を絞っていかなければなりません。このユニークなレースに出走できるのは、特別なことです。2000年に始まった連勝記録を、今年も継続していきたいと思っていることはもちろんです。」
トム・クリステンセン(アウディ R10 TDI #2):「この特別なレースに出場し結果を出すことは、レースドライバーの夢でしょう。F1 モナコグランプリ、もしくはインディ500にも喩えられるイベントであり、ドライバーなら一度はルマン24時間レースに出てみたいと思うものです。ルマンの伝説は、ファンが作り上げるものでもあります。2008年の来場者数は、25万人以上となる予想です。私の祖国デンマークからも、同郷の人々の約半分がフランスにやってきます。これはもはやレースの枠に留まらないフェスティバルなのです。美しい城に泊まる人もいれば、普通のホテルに泊まる人も、テントやキャラバンで眠る人もいます。これは素晴らしいことです!そのユニークな雰囲気を楽しむため、皆がやってきて数日を過ごすのです。誰もその魅力から逃れることはできません。土曜午後3時のスタートは、全員が息を呑みます。LM P1カーの平均ラップ速度は215km/h以上を記録しており、ピットストップもうまく行けば良いと思っています。ライバルの皆さん、お互い頑張りましょう。そしてサーキットやテレビの前のファンの皆さん、魅力的なルマン24時間を楽しんでください。」
アラン・マクニッシュ(アウディ R10 TDI #2):「ルマンが近づいてくるに従って、期待感も高まってきます。我々は一年を通じて、このたった1度のレースに向けて、膨大な労力を注ぎ込みます。ちょっとした不安感を伴う期待です。完走をしなければなりませんが、競争力を失うわけにもいきません。しかし、アウディはこれまで常に高い競争力を保ってきました。LM P1において今年は、プジョーばかりでなくローラ、アストンマーティン、ペスカローロ、オレカといったチームとのファイトがありました。ルマンでも、ここ10年で最も激しいレースが展開するでしょう。LM P2ではポルシェとザイテックが対決、GTクラスではアストンマーティン対コルベット、フェラーリ対ポルシェのバトルが見られるでしょう。あらゆるクラスにおいて、すばらしいファイトが期待できます。我々のチームに関して言えば、ディンドとトム、そして私は去年のリベンジを果たしたいと思っています!」
ルーカス・ルール(アウディ R10 TDI #3):「ルマンに参加することができ、とても嬉しく思っています。アウディのようなマニュファクチャラーのため、ルマン優勝を目指して走ることができるのは、まったく栄誉なことです。トップ集団に遅れずに付いて行き、良い結果を出したいですね。日曜の朝、夜明けを迎えてみないと順位はわかりませんが。」
アレクザンドル・プレマ(アウディ R10 TDI #3):「ルマン24時間に帰ってくることができ、とても幸せです。フランスに住む人間にとって、このレースは特別な意味を持っています。このサーキットは大好きです。チームはきわめて順調に機能しています。マイクとルーカス、それに私はLMSとALMSで経験を積んできました。完走して良い結果を出す土台はできています。アウディに乗っていれば、私はルマン初戦から表彰台に上ることができたでしょうに。」
マイク・ロッケンフェラー(アウディ R10 TDI #3):「ルマンに帰ってきて再びアウディのために走ることができ、嬉しく思っています。プジョーがいますので、今回は難しいレースになると思います。アウディスポーツ チームヨーストとは、ルマンシリーズを戦ってきましたので、自分たちの実力も分かっています。装備は万全で、去年を上回る結果を出すため、あらゆることを試します。私個人の目標は、レースでいっさいのミスをしないこと、良い結果で完走することです。」
ラルフ・ユットナー(テクニカルディレクター/アウディ スポーツ チーム ヨースト):「今年のルマンは、きっととてもエキサイティングなレースになることでしょう。この10年でもっとも興奮に満ちあふれたものだ、と予想する人も多くいます。その予想は、おそらく正しいでしょう。最大のライバルはプジョーですが、他にも速い車が多く出走します。LMSで競い合ったことにより、プジョーがとても速い車に仕上がっていることは理解しています。ルマン24時間に比べて比較的短いLMSのレースでは、プジョーよりもスピードにおいてわずかに劣るアウディR10 TDIは、歓声の中、先行車からつねに僅差でゴールし続けました。ルマンの本番で集中を欠かすことさえなければ、優勝のチャンスはあります。優勝こそが、我々の目標です。」
ドライバーラインアップ
アウディR10 TDI #1: フランク・ビエラ(ドイツ) / エマニュエル・ピロ(イタリア) /
マルコ・ヴェルナー(ドイツ)
アウディR10 TDI #2: ディンド(リナルド)・カペロ(イタリア) / トム・クリステンセン(デンマーク) /
アラン・マクニッシュ(英国)
アウディR10 TDI #3: ルーカス・ルール(ドイツ) / アレクザンドル・プレマ(フランス) /
マイク・ロッケンフェラー(ドイツ)
ルマン24時間レース:スケジュール
6月9日(月)
14:30~18:00 車検
6月10日(火)
08:30~17:00 車検
6月11日(水)
14:00~15:00 Meet the Audi Team (アウディチーム&メディア ホスピタリティ)
19:00~21:00 予選ラウンド1、第1部
22:00~24:00 予選ラウンド1、第2部
6月12日(木)
14:00~15:00 Meet the Audi Team (アウディチーム&メディア ホスピタリティ)
19:00~21:00 予選ラウンド2、第1部
22:00~24:00 予選ラウンド2、第2部
6月13日(金)
14:00~15:00 アウディプレスコンファレンス (アウディ レーシング アリーナ)
* こちらの様子はインターネット上で生放送され、日本時間同日午後9時より次のアドレスにてご覧いただけます。www.audi.de/tv (独語版)、www.audi.com/tv(英語版)
18:00~19:00 ドライバーパレード (ルマン市内)
6月14日(土)
09:00~09:45 ウォームアップ
15:00 スタート
6月15日(日)
15:00 フィニッシュ
写真と情報は、www.audi-motorsport.infoから入手可能です。
アウディR10 TDI 技術データ
ルマン2008年仕様 – 2008年6月現在
モデル名
アウディR10
車両
車両型式
ルマン プロトタイプ(”LM”P1)
モノコック
カーボンファイバーコンポジット構造、アルミニウムハニカムコア、FIA衝突および安全基準に準拠
エンジン
エンジン
90°V12ターボチャージャー付、気筒あたり4バルブ、DOHC、ギャレットターボチャージャー×2、直径39.9mmエアインテークリストリクター×2(レギュレーションに規定)、最大絶対過給圧:2.94バール、ディーゼル直噴TDI、ストレストアルミニウムクランクシャフトケース、ダウ・オートモーティブディーゼル微粒子フィルターx2
エンジンマネージメント・システム
ボッシュMS14
潤滑システム
ドライサンプ、オイルメーカー:シェル
排気量
5,500cc
最高出力
650ps超
最大トルク
1,100Nm超
ドライブ/トランスミッションシステム
駆動形式
後輪駆動、トラクションコントロール
クラッチ
セラミック
ギヤボックス
ニューマティックシーケンシャル 5速レーシングギヤボックス、開発パートナー:X-トラック
ディファレンシャル
ビスカス-メカニカルロッキングディファレンシャル
ドライブシャフト
CVトライポッドプランジ-ジョイント・ドライブシャフト
サスペンション/ステアリング/ブレーキ
ステアリング
電子制御パワーステアリング(ラック&ピニオン)
サスペンション(フロント/リヤ)
独立懸架ダブルウィッシュボーンサスペンション、トーションバー式プッシュロッド、アジャスタブル・ダンパー
ブレーキ(フロント/リヤ)
デュアルサーキット油圧ブレーキシステム、軽合金モノブロックブレーキキャリパー、カーボンファイバーベンチレーテッドブレーキディスク、無段階可変ブレーキバランス
ホイール
OZ鍛造マグネシウム
フロント:13J×18、リヤ:14.5J×18
タイヤ
ミシュラン・ラジアル
フロント:33/68-18、リヤ:37/71-18
車両重量/寸法
全長
4,650mm
全幅
2,000mm
全高
1,030mm
最低重量
900kg (LMS, LM) / 925kg (ALMS:アメリカンルマンシリーズ)
燃料タンク容量
81リットル(シェルV-パワーディーゼルGTL / BTL採用)