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2009/09/15Technology

軽量設計で世界をリードするアウディ

●ダイナミックで効率的:アウディは、軽量設計のパイオニア
●1994年以降、アルミニウム製ボディ車両を55万台以上製造
●未来のクルマのための新たな素材とテクノロジー

アウディは、軽量設計で世界の自動車メーカーをリードしています。15年前からアウディスペースフレーム(ASF)をベースにしたアルミニウムボディを製造しています。このテクノロジーの革新的なパワーは、さまざまな特許と数多くの賞が物語っています。

軽量設計はアウディ最大の強みの一つであるばかりか、ダイナミクスと効率を両立させるため、アウディブランドの象徴でもあります。エンジニアは車両をさらに軽量化し、その結果としてより一層効率化するために、多くの新しいアイデアに取り組んでいます。アウディにとって、軽量設計は今後の自動車産業の存続にとっての根本的なテクノロジーです。

車が発明されてまだ間もない時代においてさえも、アルミニウムはボディ用素材として注目されており、航空分野の動向が重要な着想の元となりました。1913年にNSUは、オールアルミニウム製ボディのタイプ8/24を製造しました。その10年後、アウディタイプKにはアルミニウム素材の実験的な流線型ボディが採用されました。1930年代には、アウトウニオンのレーシング部門に属するスペシャリストがアルミニウムパネルを手作りし、それを使用して目を見張るようなレーシングカーと、スピード記録を目指す車両用のボディと流線型パネルを製造しました。

825キログラム:1936年製造のアウトウニオンタイプC

1934年から1937年までのグランプリ規則によると、フルード、ホイール、タイヤを除く車両重量の上限は750kgでした。この規則による徹底的な軽量設計は、性能を飛躍的に高めました。1936年製造のアウトウニオンタイプC(レース参戦準備が整った状態で825kgの重量)には、380kW(520ps)を発生するV16スーパーチャージャーエンジンが搭載されていました。パワーウエイトレシオはわずか1.6kgで、その値は今日のルマンスポーツカープロトタイプと同等です。

1982年にアウディは軽量設計を戦略的なプロジェクトの水準にまで引き上げ、その時点で米国のアルミニウムメーカーと合弁事業を立ち上げました。その使命はアウディ独自のボディを再びゼロから作り直すことに尽きましたが、今度は従来のスチールよりも約2/3軽量化した素材を用い、その素材に合わせた新たな構造(アウディスペースフレーム)を採用することでした。

開発プロセスは、統合的なプロジェクトとして実施されました。40を超える特許と特許出願を生み出したプロセスによって、あらゆる分野(合金、鋳造、成形、部品の接合)における専門ノウハウに広範な基礎が確立されました。1985年にアウディは、アルミニウム製でありながら、従来型モノコック構造を引き続き採用したアウディ100のボディを発表しました。1991年秋に発表された伝説的なコンセプトのスポーツカー、アウディ アーヴスクワトロとアウディ クワトロスパイダーには、軽量金属製ボディが採用されていましたが、そのアンダーボディには依然としてサポートフレームが使用されていました。

1993年:ASFテクノロジーの探求

この新しいテクノロジーは1993年に量産準備が整いました。光沢アルミニウムの未塗装ボディを持った、シルバーに輝くコンセプトカーがフランクフルト国際モーターショー(ドイツ)で披露されました。A8の前身となるこのモデルには、Audi Space Frameの略称であるASFの名が付けられました。翌年にデビューした量産モデルA8は、自社開発によるアルミニウム製ボディを採用した初の量産車として自動車史にその名を刻みました。

A8によってアウディはプレミアムブランドの仲間入りを果たすための道筋をつけただけでなく、伝統的なスチールに代わる新たな素材の開発を本格的に開始しました。

初代A8によって実現された原則は今日でも生きています。すなわち、ダイカスト部と押し出し部が、骨組み状のスケルトン(相互に支持する要素としてアルミニウムパネルを一体化)を形成しています。さまざまな断面と形状の構成部品が最適な機能と軽量化を両立させています。

スチールと比較して、ASFを採用したボディは少なくとも40%軽量です。初代A8のボディ重量はわずか249kgで、A2コンパクト(1999年モデル)のボディ重量はわずか156kgでした。世界初の4ドア、3リッターカーであるA2 1.2 TDIの上部構造の重量はわずか135kgであり、それがディーゼル燃料消費量2.99リットル/100kmという驚異的な燃費を達成する決定的な要因となりました。

A8、R8、TT、TTロードスター:最先端テクノロジー

今日のモデル(A8とR8ならびに第二世代、TTクーペ、TTロードスタースポーツカー)にASFテクノロジーの最新の例を見ることができます。現行A8の上部構造の重量は218kgです。R8のアルミニウム製ボディ(その相互サポートエンジンフレームは超軽量マグネシウム製)の重量は210kgです。368kW(525ps)を発生するV10エンジンを搭載するこのモデルの装備重量は、わずか1,620kgです。そのパワーウエイトレシオは3.1kgであり、その姿は、贅肉を削ぎ落として厳しいトレーニングを積んだアスリートのボディを彷彿とさせます。

TTクーペのボディ重量は206kg、TTロードスターのボディ重量は251kgです。TTファミリーには他にも革新的な機能が搭載されています。フロントとリヤの車軸荷重を理想的にバランスさせるために、アウディはこの小型スポーツカー用に革新的なハイブリッド構造を開発しました。ボディの大半はアルミニウム製ですが、リヤにはスチールを採用しました。

モデルによって、TTの装備重量は20~90kg削減されました(オールスチールボディの先代モデルとの比較値)。同時に、クーペの静的なねじり剛性は50%高められ、ロードスターのそれはさらに感動的な100%も高められました。ASFは正確なハンドリング、ドライビングダイナミクス、そしてハイレベルなパッシブセーフティの基礎となります。より軽量な車両では、浪費される運動エネルギーが小さくなるだけでなく、事故に巻き込まれた他の車両に対するダメージが小さくなります。

軽量設計はスポーティさと効率をアウディの典型的なやり方で両立させます。125kW(170ps)、350Nm(258.15 lb-ft)のトルクを発生する四輪駆動スポーツカーであるTT 2.0 TDIクワトロは、100km走行当たり5.3リットルのディーゼル燃料しか消費せず、CO2排出量はわずか139g/kmです。そのダイナミックなドライビング性能(0~100km/h加速7.5秒、最高速度226km/h)は、軽量設計を巧みに応用した結果です。アウディは、走る喜びと効率の追求という相反する要素を解決する最良のアプローチとして軽量設計を用いています。

ASF:ウェイトスパイラルの解消

アウディがASF原理で解決したウェイトスパイラル(安全性の追求や新技術の搭載により重量が増加するというジレンマ)には、大きな二次的影響があります。より軽量なボディは、シャシーや燃料タンクといった他のコンポーネントの軽量化にとっての出発点です。重量を100kgを削減するたびに、100km当たりの燃料消費量は0.3~0.5リットル減少します。この値は、8~11g/kmのCO2排出量の削減に相当します。

軽量ボディは、アウディが掲げるダウンサイジングの原則(ターボチャージャーにより排気量を補う)と理想的に調和しています。極めて効率的なエンジンは低燃費にさらに大きく寄与します。軽量ボディは、重たいバッテリーを搭載する、将来の電気自動車にとっては絶対的に不可欠でもあります。それなしには、お客様が期待する性能と航続距離を実現することはできません。

アウディはこれまでにアルミニウム製ボディの車両を55万台以上製造してきました。他に、約9,000台のランボルギーニがアルミニウム製ボディで製造されていますが、車両台数または車両の多様性の面で、世界中の他のメーカーはアウディの実績に近付くことすらできません。ASFテクノロジーは、他に類を見ないサクセスストーリーなのです。アウディは、合金、部品点数の削減、製造効率面における優位性を段階的に高めてきました。開発と製造における数え切れないほどの革新によってオートメーションの水準が25%から80%に引き上げられ、スチール製ボディ構造とほぼ同等になりました。

製造面では、従来のスポット溶接の代わりに、アウディが開発した接合法(ポンチリベット、接着、またはレーザーMIGハイブリッド溶接等)が使用されつつあります。TTとR8では、構成部品の多くを接合するためにセルフタッピングスクリュが使用されています。もう一つの革新技術は、レーザー溶接による跡の見えないシーム部(TTのルーフ)です。

全プロセスチェーン(開発/プランニング、マシン/固定具/ツールの製造からプレスショップ、ボディショップ、およびペイントショップや組み立てまで)を通した完璧な相互連携によって最大限の精度が生み出されます。デザイナーのアイデアは、アウディの厳格な品質基準に従い、1/1 mm以内の精度で実現されます。

アルミニウムおよび軽量デザインセンター(ドイツ、ネッカーズルム)

1994年にアウディは、開発、生産プランニング、品質保証のために特別なアルミニウムセンターをネッカーズルムに設立しました。この施設は、2003年にアルミニウムおよび軽量デザインセンターに改名されました。このセンターでは、高張力鋼、テーラードブランク、繊維強化プラスチック、マグネシウムが担う役割が高まりつつあります。アルミニウムおよび軽量デザインセンター長であるハインリッヒ ティムは、「アルミニウムは引き続き主要な素材とみなされていますが、他の素材も徹底的に研究しつつあり、特に繊維によって強化した合成材料に注目しています」と述べています。

革新技術を生み出すアルミニウムおよび軽量デザインセンター(従業員数150名)で得られた教訓は、開発/製造分野における3桁に達する特許の基礎となっており、開発と製造の見事なバランスを誇っています。欧州特許庁は、ASFテクノロジーによる業績に関して、アウディに「ヨーロピアン インベンター オブ ザ イヤー2008」(欧州発明賞2008)を授与しました。

名誉ある賞:ユーロカーボディ賞

2006年にアウディは、TTのハイブリッド構造に関して、乗用車ボディを評価する世界で最も権威のあるユーロカーボディ賞をオートモーティブ サークルインターナショナルから授与されました。これまでにアウディは、2003年にA8のボディ構造に関して、この重要かつ革新的な賞を獲得しています。

2008年には、アウディQ5も3度目となる同賞を受賞しました。軽量設計は、スチールパネル製ボディにとっても最優先される課題です。わずか355kgのこの中型SUVは、このクラスで最軽量のボディを有しています。熱成形された超高張力鋼がこの上部構造の頑丈な骨格を形成しています。通過型の炉内で約920℃まで加熱された超高張力鋼は、次に冷却したプレスツール内で約180℃まで冷却され、極めて高い強度を実現しています。

車両の他の部分における軽量設計

アウディは、ドライブチェーンとシャシーにおいても軽量設計を体系的に採用しています。クランクケースを軽量化するために、多くのエンジンにはハイテク製造プロセスの結果であるアルミニウムおよびバーミキュラ黒鉛鋳鉄を採用しています。多くのモデルにはアルミニウム製部品が主体となるシャシーを使用しています。高性能モデルでは炭素繊維セラミック製ブレーキディスクをオプションに設定しています。軽量設計の他のハイライトには、アルミニウム製のブレーキキャリパ、ボンネット/トランクリッド、サイドパネル、またはカバー構成部品や、マグネシウム製のステアリングホイールリムまたはインストルメントパネルマウントがあります。

モータースポーツの世界から得られた経験は、量産車の開発現場にフィードバックされています。ルマンスポーツプロトタイプとDTM(ツーリング)カーにとっては、軽量化と重量配分は極めて重要です。レースカーは、製造開発エンジニアに炭素や炭素とメタルの組み合わせに関する重要な情報を提供します。

新素材と合金に関する研究が続行されており、耐久性が最大で最も軽量な素材や、素材と相性の良いデザインや製造法に焦点が合わせられています。アウディは、業界リーダーとしての役割、軽量設計における「Vorsprung durch Technik」(技術による先進)を今後も拡大していきます

※写真および詳細情報は、www.audi-mediaservices.com/enから入手可能です。

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