● メカニックに本格的フィジカルトレーニングを実施
● スペアパーツや特殊工具を入念かつ効果的に準備
● 数百回におよぶピットリハーサル
5月19日 インゴルシュタット:来る6月14 - 15日に開催されるル・マン24時間レースは、アウディスポーツ チームヨーストが迎えるシーズン最大のイベントです。世界最多レベルの観客が集い、世界耐久選手権(WEC)のシリーズポイントが2倍与えられるレースということもあり、ル・マンの準備は他のレースに比べ、大規模でより入念に行われます。
Audi R18 e-tron quattroがピットストップした際は、ぜひメカニックの動きに注目して下さい。どのメカニックも非常に訓練されており、その動作に無駄がないことに気付くと思います。特にタイヤ交換、給油、ドライバー交替は、抜群の精度で行われます。これを実現するため、メカニックはあらゆる作業に改善を重ね、その「動き」を数百回もリハーサルしています。
タイヤ交換が主となるDTMなどのスプリントレースと異なり、ル・マンでのピット作業は多岐に渡ります。作業のメインは、給油と必要に応じたタイヤ交換です。レギュレーションにより、作業出来るメカニックの数が最大4名に制限されています。タイヤ交換は、そのうち2名でおこないます。少ない人数のため、各作業を正確に行うことが非常に重要となります。メカニックはフィジカルトレーニングと各種用具の入念な下準備を行い、目隠しでも素早く作業出来るまでに練習を重ね、高い精度を生み出します。
アウディスポーツ チームヨーストのテクニカルディレクター・ラルフ ユットナーは「メカニック達は1月から週に2回2時間のジム トレーニングを行っています」と説明します。このスペシャルトレーニングは、専門のフィットネス トレーナー監修のもとで行われます。アウディスポーツ チームヨーストのチーフ ピットクルー・ シュテファン グリムは「持久力と体力の向上がトレーニングの2つの大きな柱です。インパクトレンチを使ったタイヤ交換作業中などに不慮の怪我を防ぐのが最大の目的です」と説明しています。メカニックに最適なエクササイズ プログラムは、1983年からアウディスポーツのチームドクターを務めるDr. クリスチャン ジョンが考案しました。ドクターは、レースウイーク中の栄養管理についてもチームをサポートします。
チームメンバーは車両開発の初期段階から深く携わっており、年々進化を遂げるレーシングカーの最先端技術に対応します。アウディスポーツ チームヨーストの主要メカニックは、冬に行われるアウディ開発チームの次世代マシンのテスト走行に参加し、早い段階から新しい技術に触れ、その内容を他のメカニックに伝え万全の準備を行います。その一方で、インゴルシュタットではシーズン開幕の準備も同時に行われます。シュテファン グリムは「非常に早い段階から、次世代マシンの刷新された部分すべてを検証し特殊工具などを準備します。さらに、作業行程に関する詳細な指示書も作成します」とコメントしています。分かりやすい例を挙げると、サスペンションパーツは、その時のセッティングに合わせてほぼ組みあがった状態で準備されます。アクシデントが発生した場合、チームはサスペンションをアッセンブリーで素早く交換します。ピットクルーはこの作業をわずか4-5分で行います。
損傷したボディパーツの交換も、驚くべき早さで行われます。リヤセクションの場合、ウイングやディフューザー、エンジンカバーを含んだすべてのパーツ交換を、60-70秒で終わらせてしまいます。あるピットクルーは「落ち着いてやれば、自然に作業時間は短くなります。その場で検討する課題を極力減らし、素早く作業出来るようになるには、多くの準備や経験が必要です。レース中の作業は、例えば歯磨きのように、身体が覚えた動作を自然に行うようになるべきなのです」と説明します。驚異的な作業スピードは、あらゆるパーツを入念に検証して用意することに支えられています。膨大な量におよぶ事前準備は、そのひとつひとつが細かく検証されます。その上で充分な量のスペアパーツが仮組みされた状態で用意されます。
ピットクルーの緊張はレース終了まで続きます。シュテファン グリムは「ピットクルーは、レース中ずっとスタンバイしていなければなりません。その意味でも、栄養管理とフィットネスが大きな意味を持ちます。ピットストップの合間でも、断続的に聞こえるドライバーとの無線が、ゆっくり寝かせてくれません」と説明しています。さらに、ピットウォールにいるレースエンジニアからの指示がいつ無線で届くか分からない為、クルーは気を抜くことができません。